広告の費用対効果はどう考えるの?限界CPAの考え方や算出方法を徹底解説

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「広告の出稿方法は分かったけれど、費用対効果はどう判断すればいいの?」

これは、Webマーケティングを始めたばかりの人からよくもらう相談の1つです。マーケティングは会社のお金を使う部署なので、本当に費用対効果が合っているのか最初は慎重になりますよね。

本記事では、CPAやLTVの意味を解説した上で、広告の費用対効果を測る上で必須の「限界CPA」の考え方や算出方法について一から解説していきます。

広告の費用対効果は顧客獲得単価(=CPA)で見る

結論から述べると、広告の費用対効果は目標としている顧客獲得単価以内で獲得できているか否かで判断します。

顧客獲得単価のことをCPA(Cost Per Acquisitionの略称)と言い、ひとりの顧客を獲得するために費やせる上限のCPAを限界CPAと言います。(企業によってはそのまま目標CPAと呼んだり、許容CPAと呼んだりすることもあります)

本記事では限界CPAの呼び方で統一したいと思います。

広告運用担当者は、限界CPAよりも安く顧客を獲得できるように広告を運用していくことがミッションとなります。

しかし、ここで困るポイントが限界CPAをいくらに設定するのが適切か?ということです。次に限界CPAの算出方法を見ていきましょう。

CPAについてさらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

CPA(顧客獲得単価)とは?広告効果を測るための重要指標を解説

限界CPAの前に、まずはLTV(=顧客生涯価値)を理解しよう

CPAやらLTVやらマーケティングは横文字が多いですね…
最初は抵抗感があるかもしれませんが、慣れれば息をするように口から出てくるようになるので大丈夫です。LTVもマーケターであれば必ず理解しなければならない概念です。

LTVとは何か?

LTV(Life Time Valueの略称)は顧客生涯価値のことです。端的に言うと、ひとりの顧客から生涯にわたって得られる収益の総額のことを指します。企業によって売上で見る場合と、利益で見る場合のどちらのケースもあります。

本記事ではLTV=売上として説明を行います。

例えば、動画配信サービスのNetflixは月額課金制となっているため、長く使ってもらえればもらうほどLTVが高くなります。平均して12ヶ月継続する場合、12ヶ月分で支払った月額料金の総額がLTVとなります。

LTVはどの事業者でも使える考え方ですが、特に継続して利用されるサービスや商品において役に立ちます。最近ではNetflixのようなサブスクリプションと呼ばれる月額課金サービスを運営する企業において、LTVが重要な経営指標となっています。

LTVの算出方法

LTVは下記で算出できます。

LTV = 1回あたりの平均購入単価 × 年平均購入頻度 × 平均継続期間

例えば、Netflixを丸々5年継続した場合、毎月の月額課金が¥980で1年間に12回課金されるため、LTVは下記になります。

LTV = ¥980 × 12回 × 5年 = ¥58,800

まずはあなたが売っている商品のLTVを算出してみましょう。もし商品をリリースしたばかりで、平均購入頻度や継続期間が読めないという場合は、固めの数値設定にしておきましょう。

LTVの具体例やLTVを高める方法など、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法と高めるための施策を解説

LTVは売上、CPAはコスト

LTVとCPA、最初はどっちが何を指しているか混乱してしまうかもしれませんが、実態は全く別ものです。LTVは単位あたり(= 顧客あたり)の売上、CPAは単位あたり(= 顧客あたり)のコストを表しています。

アルファベット3文字で覚えるよりも、省略なしの単語として理解することをおすすめします。何を意味するか迷った際に、単語として理解できていれば意味を思い出すことができます。

LTVから限界CPAを算出する

ここまでLTVについて説明してきました。 その理由は、限界CPAはLTVから逆算して算出するからです。

冒頭でも説明した通り、限界CPAは顧客獲得にかける広告宣伝費のことです。よって、コストに分類されます。

仮に、ある企業のコストが広告宣伝費の他に、原価、人件費、家賃だったとしましょう。この場合、利益を算出する式は下記のようになります。

利益 = 売上 - コスト
   = 売上 - (広告宣伝費 + 原価 + 人件費 + 家賃)

LTVやCPAはいずれも1人あたりの売上やコストを示しているので、上記の式を一人あたりに置き換えて考えます。
すると、下記のようになります。

1人あたり利益 = LTV - 1人あたりコスト
        = LTV - (限界CPA + 1人あたり原価 + 1人あたり人件費 + 1人あたり家賃)

この中で、家賃や人件費、原価はある程度決まっており、一番コントロールしやすいのは利益です。利益をどれだけ確保するかによって、限界CPA、つまり広告宣伝費にかけられる金額が決まります

ここでは、10%の利益を確保すると考えて限界CPAを算出してみましょう。その他の数値は下記のように仮定します。

LTV = ¥500,000
1人当たりの利益 = ¥50,000(10%)
1人当たり原価  = ¥150,000(30%)
1人当たり人件費 = ¥150,000(30%)
1人当たり家賃  = ¥100,000(20%)

この場合、広告宣伝費にかけられる金額は残りの10%、つまり¥50,000になります。

従って、限界CPAは¥50,000です。

利益率を何%確保するかは経営の論点です。ベンチャー企業では先行投資として、赤字を出してでも広告宣伝費を投下することも多いです。このような場合は広告宣伝費率が上昇し、限界CPAも大きくなります。

以上から、LTVと限界CPAは密接に関係していることが分かってもらえたのではないでしょうか。

限界CPAをコンバージョン地点ごとに分解する

ここまでで、限界CPAを求めることができました。しかし、ここで算出できた限界CPAは商品の購入が確定している顧客の獲得単価であることを忘れてはいけません。

あなたがインターネットで物を売っていて、決済完了をコンバージョンと定義しているのであれば、この限界CPAをそのまま広告運用の目標設定として使って問題ありません。

しかし、例えばあなたの会社がアプリを運営していて、アプリのダウンロードをコンバージョンとして定義している場合は話が変わってきます。アプリをダウンロードして、その後の課金率が30%の場合は30%を限界CPAに掛けなければいけません。

「限界CPA × 30%」がアプリダウンロードにかけられる限界CPAになります。

広告運用をする時は、何を広告のコンバージョンとして設定しているかは非常に重要なポイントです。アプリダウンロードなのか、会員登録なのか、お問い合わせなのか、購入完了なのかで限界CPAが異なってくるからです。

いくつか例を見てみましょう。

スクール事業を営むA社が資料ダウンロードをCVとする場合

顧客獲得の限界CPAと各係数を下記の通りとします。

顧客獲得の限界CPA¥60,000
申込から支払い完了に至る割合50%
資料ダウンロードから申込に繋がる割合20%

この場合、A社は資料ダウンロードを1件獲得するために、CPAを¥6,000以内に抑える必要があります。

労務システムを販売しているB社が問い合わせをCVとする場合

顧客獲得の限界CPAと各係数を下記の通りとします。

顧客獲得の限界CPA¥500,000
見込み顧客から受注に転換する割合50%
商談から見込み顧客に転換する割合30%
問い合わせから商談に転換する割合70%

この場合、B社は問い合わせを1件獲得するために、CPAを¥52,500以内に抑える必要があります。

このように、コンバージョンとする地点によって、限界CPAを割り戻していかなければいけません。また、商談率や受注率など各係数を改善することで限界CPAを引き上げることができます。

最終的には顧客獲得の限界CPAを見よう

今回、限界CPAの求め方をお伝えしたので、これで広告運用を開始することができます。

転換率の目標を設定して運用を開始しても、実際には目標を下回ってしまうこともあります。先程の例のB社の場合、問い合わせを¥52,500で獲得できても、実際は50%しか商談に転換しなければ、問い合わせの限界CPAは¥37,500になってしまいます。

よって、最終的には顧客獲得の限界CPA以内で獲得できているかを見なければいけません。広告運用の数値だけ見るのではなく、転換率までを可視化して費用対効果を測っていきましょう。

内容のまとめ

  • 広告の費用対効果は目標としている顧客獲得単価以内で獲得できているか否かで判断する
  • ひとりの顧客を獲得するために費やせる上限の広告費を限界CPAと言う
  • LTVはひとりの顧客から生涯にわたって得られる収益の総額のことを指す
  • 限界CPAは、LTVから必要経費や目標とする利益を差し引いて算出する
  • 限界CPAはコンバージョン地点によって分解する必要がある
  • 最終的には顧客獲得の限界CPA以内で獲得できているかが重要