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「自社の今のフェーズでどのようなマーケティング施策が有効なのか分からない」
マーケティングをやっていると、今やっている施策が正しいのか不安に感じることもあるでしょう。
マーケティングはフェーズによって、やるべき施策、有効的な施策が異なります。これは、事業フェーズごとで優先的に取り組むことが変わってくるからです。
本記事では、事業の成長フェーズを4段階に分けて、それぞれのフェーズで取り組むべきマーケティング施策をまとめました。事業の立ち上げフェーズからブランドを確立するフェーズに携わった私自身の原体験を元にしているため、唯一の正解ではないことを予めご了承ください。
目次
想定している読者
本記事で想定している読者は下記のような方々です。
- 主に広告を使ってビジネスを伸ばしていきたいと考えている
- 中小企業・ベンチャー企業に属し、これから自社サービスを拡大させていきたい
- 無形商材を扱っている
鍵は「LTV」と「CPA」のコントロール
事業を拡大させていく上で重要な指標がLTVとCPAの2つです。この2つの指標をコントロールしながらマーケティング施策を打っていくことで、事業成長を実現することができます。
LTVの詳細が知りたい方は、先に下記をご覧ください。
LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法と高めるための施策を解説CPAの詳細が知りたい方は、先に下記をご覧ください。
CPA(顧客獲得単価)とは?広告効果を測るための重要指標を解説また、LTVに広告宣伝費率を掛けて算出した、ひとりあたりの顧客を獲得するのに費やせるコストの上限を限界CPAと言います。広告宣伝費率を何%にするかは、利益をどれだけ出したいかにもよるため、経営の判断軸となります。
限界CPA = LTV × 広告宣伝比率
限界CPAの詳細が知りたい方は、先に下記をご覧ください。
広告の費用対効果はどう考えるの?限界CPAの考え方や算出方法を徹底解説常に限界CPA以内で顧客獲得ができるようにコントロールしていくため、下記の公式が成立します。右側のCPAというのは、実際に運用した結果として得られた実績CPAという意味合いになります。
限界CPA > CPA
この式に先程の限界CPAの方程式を代入すると下記のようになります。
LTV × 広告宣伝比率 > CPA
以上のことから、限界CPAを上げるほど、顧客獲得に投下できる広告費を増やすことができるということが分かります。限界CPAを上げる方法は下記の2つしかありません。
- 広告宣伝比率を上げる
- LTVを高める
①の広告宣伝比率は業界や企業の方針によって様々なので、今回は省略します。②のLTVはマーケティング施策を打つことによって高めることができるため、この後紹介する4つのフェーズでどのような施策の選択肢があるのか紹介したいと思います。
以上、ここまでの内容を踏まえた上で、次から事業フェーズごとのマーケティング施策について見ていきたいと思います。
4つの事業フェーズ
企業が事業を成長させる過程において、マーケティング観点では4つのフェーズを経験します。ただし、これはあくまで私個人の経験を元にした見解ですので、一般的な共通認識ではないことをご了承ください。
それぞれのフェーズで優先的に取り組むべきことが異なります。基本的には、事業を一つずつ上の段階に移行していき、最終的にブランド確立期まで到達することがゴールとなります。
では、各フェーズごとで検証すべきポイントと、マーケティング施策について見ていきます。
【フェーズ1】プロダクトリリース期
プロダクトリリース期は、その名の通りプロダクトを開発してリリースするフェーズです。何よりもまずリリースできるプロダクトを開発することに全勢力を注ぎ込む必要があります。
リリースしてもユーザーからの反応が悪ければ、仮説を練り直したり、プロダクトを改善して、まずは使ってもらえるプロダクトを作ることが最優先事項になります。
プロダクトをリリースして、ユーザーに使ってもらえるかを検証すること
プロダクトリリース期では、まだ利益を生むか分からないサービスに対して広告費を積極的に使うことはできません。よって、出来るだけお金をかけずにユーザーに知ってもらう施策を実行していきます。
広告費を使わないので、LTVやCPAについても意識しなくて大丈夫です。
- 社員のFacebook、Twitterでシェア
- メディアへの掲載
- ブログの執筆
- プレスリリースの配信
- 直接見込み顧客への営業(toB)
- 無料イベント・セミナー開催
- 口コミが生まれる仕組みを開発
- サービスサイト改善
など
費用をかけずにできることを泥臭くやっていくことが求められます。
【フェーズ2】エコノミクス成立期
プロダクトがユーザーのニーズを満たし、継続的に利用されることが分かれば次のフェーズに移行します。次のフェーズはエコノミクス成立期です。
このフェーズでは、リリースしたプロダクトがビジネスとして成立するのか否かを検証することがゴールです。初期のユーザーには使われたけれど、広告では全く新規ユーザーを獲得できないのであれば、ビジネスを再現性高く成長させることはできません。
具体的には、LTVから算出した限界CPA以内で顧客を獲得することができるかを検証します。LTVがまだ見えない場合は想定のLTVで試算することになりますが、固めの数値設定にしておきましょう。
「LTV × 広告宣伝費率 > CPA」が成立するのかを検証すること
マーケティングの方針はターゲティングをして顕在層を獲得することです。顕在層を限界CPA以内で獲得できないのであれば、それ以上顧客層を広げても顧客獲得は難しいでしょう。
よって、顕在層向けの広告媒体や、ターゲティング精度の高い媒体を活用して顧客獲得を行います。また、広告運用と並行して広告用LPの作成・改善を行って、サイトCVRの改善も行いましょう。
いきなりサービスの利用を促すことが難しい場合は、無料体験・無料サンプルのような無料オファー等を準備します。
- リスティング広告
- SNS広告(Facebook、Twitter、LINEなど)
- GDN、YDNのリマーケティング
- 広告用LPの作成・改善
- エントリーフォーム最適化
- 細かなターゲティング
- フロント商材の開発(無料体験や無料サンプルなど)
- セールスの改善(toB)
など
【フェーズ3】ビジネス拡大期
エコノミクス(LTV × 広告宣伝費率 > CPA)が成立すれば、ビジネスを拡大する準備が整いました。プロダクトが市場に受け入れられていることを意味するからです。そのため、エコノミクスを成立するまでが非常に大変です。
次のビジネス拡大期は大きく広告費を投じて、新規顧客の獲得数を飛躍的に伸ばしていくフェーズです。ビジネスの種類によっては、営業マンやカスタマーサポートを増員して組織を作っていくフェーズでもあります。
LTVを向上させながら、大きく広告予算を投じて限界CPA以内で獲得できるチャネルを増やしていく
このフェーズではプロモーションの重要性が高くなります。広告予算を増やすといっても、あくまで限界CPA以内で新規顧客獲得の最大化を行う必要があります。
ターゲティングの拡大、新規獲得チャネルの拡大、オウンドメディアの立ち上げ、インフルエンサーの起用などを通じてこれまでアプローチできていなかった新しい顧客層を開拓していきます。
どのチャネルが当たるかは分からないので、積極的に新しい新規獲得チャネルにチャレンジすることがポイントです。いろんな施策にトライして当たった施策が出てくれば、それを横展開したり応用する発想で施策を打っていくことができます。
また、獲得したリードの転換率や利用頻度を高めるために、顧客管理体制の構築(CRM)を行い、リードナーチャリングも同時に実施していく必要があるでしょう。
- 動画クリエイティブの作成
- 動画メディアへの広告出稿(YouTube広告など)
- オウンドメディアの設立
- SNS運用(YouTube運用、Twitter運用など)
- インフルエンサーの起用
- PRの強化
- キャンペーンの開発
- アフィリエイト広告
- タイアップ広告
- 純広告
- リードナーチャリング
- 展示会への出展
- LPの複数訴求展開
- 口コミ、紹介経由の紹介
- エリアを絞ったテレビCM
など
また、新規顧客の獲得を伸ばしていくことと並行して、LTVの向上施策も打っていきます。前半でもお伝えしたとおり、LTVが上昇すれば限界CPAを引き上げることができるからです。限界CPAを引き上げれば、新規獲得のマーケティング施策に幅を持たせることができます。
- アップセル商品の開発
- クロスセル商品の開発
- 商品単価を上げる
- 長期プランの提供(年払いプランなど)
- 新機能の開発
- CRMの体制構築
- UIの最適化
- プッシュ通知
- コミュニティの形成
など
LTV向上施策の詳細を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法と高めるための施策を解説【フェーズ4】ブランド確立期
ビジネス拡大期で広告予算を増やして、様々な新規獲得チャネルを開拓していくと徐々にCPAが上昇していきます。顕在層を刈り取ってしまったことで、イノベーター理論で言うところの、アーリーアダプターからアーリーマジョリティ、レイトマジョリティに顧客層が移ってきているためです。
これ以上広告予算を増やしても限界CPAを超えてしまうというタイミングでブランド確立期に移行します。ブランドを確立すると、それだけで選ばれる理由になります。例えば、LINEのことをメッセージアプリと呼ぶ人はいないでしょう。LINEはLINEであり、「LINE使ってる?」と聞くはずです。
このように、ブランドが確立すると顧客獲得の難易度が下がり、CPAを下げることに繋がります。一方で、ブランドを確立するためには大きな先行投資をして認知を拡大する必要があります。
このフェーズではサービスの認知度を拡大することで、サービスが属する領域でNo.1となることを目指します。
認知を獲得するための広告にも投資をして、サービスが属する領域でNo.1となることを目指す
ただし、ブランド確立は全てのサービスで実施すべきものではありません。認知を獲得するということは、儲かっているということを市場に伝えることにもなるため、競合が増えます。ニッチなジャンルであれば、ビジネス拡大期までをやり込んでニッチトップになる戦略もあります。
認知拡大の手段としてはほぼテレビCM一択となります。YouTubeが伸びてるとは言え、未だ20代でも最も見ている媒体はテレビです。テレビCMと連動させてその他のマス広告に露出したり、キャンペーンを開発して大型プロモーションを実施していきます。
もちろん、フェーズ3のビジネス拡大期で実施していた施策も継続して実施していきます。良かったものを残してダメだったものを切り捨てていきましょう。
- 全国的なテレビCM
- 知名度の高い著名人の起用
- その他マス広告(新聞、雑誌、交通など)
- キャンペーンの開発
- リッチなクリエティブの開発
- ブランドのリニューアル
など
また、フェーズ3から引き続きLTVを高めるための施策も打っていきます。
ここまでくれば強化なブランドが確立されつつあり、広告だけでなくオーガニックの顧客開拓比率の上昇も見込めます。また、市場のアッパーが見えてきたら、新規事業に投資するなど別のところにお金を使うことも考えられるでしょう。
小さくテストしてスピード重視の戦いをする
様々な施策を列挙してきた訳ですが、結局そのサービスにとって何が良い施策なのかはやって見ないと分からないです。よって、小さくテストをしてダメだったらすぐに次にいくという潔さと改善スピードが重要だと思います。
特にベンチャー企業や中小企業は資本力では大企業に勝てませんが、スピードで優位性を生むことができます。また、一個人の能力に依存するのではなく、スピード重視という文化をマーケティングチームの中に根付かせることも重要となってきます。
スピード重視の文化を築くための1つのアクションとして、施策を実行する前に必ず定量目標を決めることをおすすめします。例えば、サイトの改善を行う際に「2000セッション経過時点でCVRが高かった方を正とする」という目標を定めていれば、施策の成否が瞬時について次の検証に即時に移ることができます。
内容のまとめ
- 事業成長の過程において重要なことは、LTVとCPAをコントロールしていくこと
- 新規顧客のマーケティングにおいては常に「LTV × 広告宣伝比率 > CPA」が成立している必要がある
- 事業を拡大していく上で、マーケティングの4つのフェーズが存在する
- プロダクトリリース期ではとにかくユーザーに使ってもらえるプロダクトを作ることが最優先事項であり、LTVやCPAは強く意識しなくてもOK
- エコノミクス成立期では「LTV × 広告宣伝比率 > CPA」が成立するかを検証することが最優先事項であり、お金をかけずにプロモーションを行う
- ビジネス拡大期では、「LTV × 広告宣伝比率 > CPA」を維持した状態で広告予算を増やしてプロモーションを強化していく。また、並行してLTVの向上施策を実施して、限界CPAを高めていく
- ブランド確立期では、認知広告にも投資してサービスが属する領域でNo.1となることを目指す。認知を拡大する広告チャネルは現段階ではテレビCM一択
- 成長スピードの事業においては、様々な施策にトライしてダメだったら次にいくというスピード感が大切