営業や分析力とともに、クリエイティブな思考が必要とされる「広告代理店」。性別に関係なく、成果次第で高収入や役職アップが狙えるので、女性の活躍割合が高い職業と言えます。そのため、就職や転職を考えている女性も多いのではないでしょうか。
ただ「実際に入社した場合の年収やキャリアパス」は気になるもの。
そこで今回は「広告代理店で働く女性の年収・キャリアパス」を、元広告代理女子である筆者が解説します。
筆者は実際、ベンチャーと中小企業の広告代理店2社に勤務し、約3年半広告代理店業界にいました。実体験とあわせて、周りにいた女性上司や先輩の様子なども織り交ぜながら紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
広告代理店の仕事は女性に向いてるのか?
正直、人によって合う・合わないがあるため断言はできませんが「キャリアを求める女性なら向いている」というのが筆者の答えです。ここでいうキャリアは、高収入や特定の役職、独立や起業などを目指している場合を指します。
一方で、「ライフワークバランスを大切にしたい」「出産・子育てと両立させたい」というライフプランを望んでいる場合、企業にもよりますが、中小企業以上でないと難しいと言えるでしょう。
なぜなら、広告代理店は多忙かつブラックな環境下が多く、ベンチャー企業だとよりそのような特色が濃いからです。
ただ広告代理店の業務内容は、女性が活躍できる場面も多く、実際に筆者の元勤務先も6割が女性社員でした。以下で、広告代理店を構成する職種と、それぞれの職種における女性の向き・不向きを詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
営業職
1つ目は「営業職」で、どちらかというと男性社員の活躍が多く、女性社員は少な目である場合が多いでしょう。
理由として、社外と社内のバランサーの役割を担いつつ、売上などの目標達成をさせる必要があり、体力・メンタル共に負担が大きいため、女性の繊細な身体だと難しいからと言えます。
まず、広告代理店はクライアントという、依頼主でありお客様から仕事をもらうことが前提となります。そのクライアントから依頼を受けたり、営業活動を通して広告予算を獲得し、代理で広告を出稿・運用するのが広告代理店の仕事です。
具体的に営業職では、クライアントへの提案(自社のアピール)に加え、新規クライアント獲得のための情報収集やアポイント取得などを行い、売上拡大につなげる業務を主に行います。あわせて、社外・社内問わず提出資料の作成などの対応を行うことが多いでしょう。
このように、クライアントとの信用関係を築きながら、同時に社内のマーケティング部門に依頼を行い、売上を構築していきます。MTGや外回り、細かなタスクなどの雑務も合わさり、過密スケジュールになることが多いため、どちらかいうと男性向きの職種です。
クリエイティブ職
2つ目は「クリエイティブ職」で、広告代理店の中でも特に女性社員の活躍が多く、女性社員の割合が高いと言える職種です。筆者が在籍していた広告代理店でも、8割以上が女性社員で構成され、統括管理をしていたマネージャーも女性が担っていました。
クリエイティブ職は、主にマーケティング職、時には営業職から依頼を受け、対象の商品やサービスの広告を制作します。
制作範囲は企業によりますが、画像や動画、LP(ランディングページの略称。商品やサービスをアピールし、成果に繋げるためのWebページ)デザインなど対象の商品やサービスを表す全てに関わるでしょう。
クリエイティブ職は受けた依頼内容を確認しながら、商品やサービスが持つ雰囲気や性能、ターゲット層の好みなどをデザインに組み込む必要があり、的確かつ創造的な発想が求められます。
そのため、どちらかというと、男性よりも優れた色彩感覚や、流行などをキャッチできる敏感さを持つ女性が活躍する場面が多いと言えるでしょう。
納期に関しても「依頼から○日で納品」など、クリエイティブ職側が握れる場合が多く、過密スケジュールを避けられるという部分も女性向きと言えます。
マーケティング職
3つ目は「マーケティング職」で、こちらも女性社員の活躍が多く見られる職種です。筆者が在籍していた代理店や、転職した同僚・先輩が在籍する競合他社の様子を伺っても、大体男女比が1対1ぐらいの企業が多いです。
マーケティング職は、営業が獲得してきた予算を使って、担当する媒体での広告出稿を行い、最終的な成果に繋げます。成果の定義はものによりますが、商品・サービスの販売や申し込み、問い合わせなど様々な種類があり、クライアントが求める成果に繋がるように「広告の運用・管理」を行うイメージです。
具体的には、商品やサービスのターゲット層を分析し、広告案の構想・準備を進め、出稿します。その後広告を介し「何%のユーザーが流入したのか、その中から何%が成果に繋がったのか」を数字やデータで可視化させ、より成果に繋げられるよう日々試行錯誤するという業務です。
論理的思考や、数字を基にした思考が必要とされるのはもちろんですが、広告は「ユーザーの心を動かし成果に繋げる」のが最終的な目的です。
そのため、ユーザーの心情に寄り添った広告案も同時に求められるので、相手の気持ちに寄り添う「共感力」をもつ女性は、活躍の場が多いと言えます。
バックオフィス職
4つ目は「バックオフィス職」で、こちらもクリエイティブ職と同様、特に女性の活躍が多い職種です。筆者が在籍していた代理店でも、9割以上が女性社員で構成されていました。
バックオフィス職は、経理や総務、人事など「企業活動を続けるために必要な手続きを担う」職種です。具体的には、会社のお金や備品の管理、福利厚生の整備や、新卒・中途などの採用活動のアシストを担当します。
的確さや丁寧さに加え、マルチタスク処理能力が求められるため、細かな作業や丁寧な処理、同時並行を得意とする人が多い女性は、どちらかというと男性より向いていると言えるでしょう。
その他にも、以下の記事で広告代理店の仕事が向いてる人・向いていない人の特徴をより詳しくまとめているので、気になる人はチェックしてみてください。
広告代理店に向いてる人・向いていない人の特徴と学歴の重要性を経験者が解説広告代理店で働く女性の年収・給料
では次に、広告代理店で働く女性の年収・給料について紹介していきます。以下の表が、役職・年齢ごとの年収・給料指標です。
年齢ごと
年齢 | 年収 | 月額給与 | ボーナス |
---|---|---|---|
20~24歳 | 335万円~385万円 | 24万円 | 96万円 |
25~29歳 | 429万円~479万円 | 30万円 | 120万円 |
30~34歳 | 427万円~527万円 | 33万円 | 132万円 |
35~39歳 | 497万円~601万円 | 38万円 | 150万円 |
40~44歳 | 554万円~675万円 | 42万円 | 169万円 |
45~49歳 | 634万円~756万円 | 47万円 | 189万円 |
50~54歳 | 700万円~810万円 | 51万円 | 203万円 |
55~59歳 | 693万円~803万円 | 50万円 | 201万円 |
60~65歳 | 447万円~547万円 | 34万円 | 137万円 |
役職ごと
役職 | 年収 | 月額給料 | ボーナス |
---|---|---|---|
主任 | 579万円 | 36万円 | 145万円 |
係長 | 721万円 | 45万円 | 180万円 |
課長 | 953万円 | 60万円 | 238万円 |
部長 | 1053万円 | 66万円 | 263万円 |
基本的に、男性と女性で給料の差が出ることは、どの企業でもないでしょう。同じ役職であれば、男女共に同じ給料となります。
ただ正直にお伝えすると、筆者が在籍していた広告代理店は、上記表よりも少し低かったです。大手企業や中小企業、ベンチャーなど企業規模によっても年収・給料・ボーナスは変動するので、参考程度に確認頂ければと思います。
広告代理店で働く女性のキャリアパス
ここまで、広告代理店を構成する職種や、年収・給料に関して紹介しました。次に「広告代理店で働く女性のキャリアパス」を詳しく解説します。筆者の周りの先輩や、同僚の話を織り交ぜながら紹介するので、ぜひ参考にしてください。
広告代理店の中で役職を上げる
まず1つ目は「広告代理店の中で役職を上げる」というキャリアパスです。一番スタンダードかつ目指す人が多いキャリアと言えるでしょう。企業にもよりますが、一般社員から大体4種類以上の役職が存在することが多いです。
各企業ならではの人事評価制度を取り入れ、評価を満たした場合に1つずつ役職が上がるという形になります。役職が上がるごとに給料はもちろん、業務量や責任も増えるため、よりやりがいが増えていくと言えます。
筆者の在籍していた広告代理店を基に、以下で役職例をあげます。具体的にイメージしやすいよう「Web特化型広告代理店のマーケティング職」という仮定でご確認ください。
リーダー | マーケティング職で健康食品を扱う3人程のチームを管理 |
マネージャー | 健康食品を扱うマーケティングチーム全体を管理 |
シニアマネージャー | 健康食品・美容商品を扱う2つのマーケティングチームを管理 |
統括マネージャー | toC向けのWebマーケティング運用部門を管理 |
上記のように「リーダー→マネージャー→シニアマネージャー→統括マネージャー」と、役職が上がるごとに、管理する人数や売上規模が広がります。
統括マネージャーとなると、toC向けのWebマーケティング(例:アパレル、教育、家具・雑貨など)を全てまとめて管理する役割を担うため、取締役など重役に近い存在になるというイメージです。
業界上位の広告代理店に転職する
2つ目は「業界上位の広告代理店に転職する」というキャリアパスです。ベンチャーから中小企業、中小企業から大手企業など、広告業界の中でもより売上規模の大きい会社に転職するというイメージになります。
このキャリアパスを目指す場合、まず転職前の勤め先でしっかりと実績を残すことが大前提となります。理由として、業界上位の企業は給料や福利厚生が好待遇だったり、スケールの大きい業務に携われる場合が多いので、その分人気が高く倍率も高いです。
そのため、昇進や業務実績など、経験を基にアピールできる部分が多ければ多いほど、業界上位への転職が有利となるでしょう。筆者もベンチャーから中小企業への転職を経験した際、ベンチャー企業での売上実績を主にアピールし、内定を獲得しました。
入社後、当時の倍率は200倍以上あったと人事担当から聞いた時、自分でもびっくりしたのを覚えています。もし今後、業界上位の広告代理店などへの入社を目指している場合、まず勤め先で実績や経験をしっかりと作ることを意識するのが大切です。
事業会社にマーケターとして転職する
3つ目は「事業会社にマーケターとして転職する」というキャリアパスです。事業会社とは、広告代理店にとってクライアントに当たる会社であり、商品やサービスの企画や開発を行っている会社を指します。
事業会社に転職することで、その会社が企画や開発を行う商品やサービスの「専任マーケター」として活躍できます。購入など具体的な成果に繋げるマーケティングはもちろん、認知拡大やブランディングなどを目標としたプロモーション活動など、事業会社ならではのマーケティング手法を経験できるでしょう。
このキャリアパスを目指す場合、その事業会社が扱っている商品やサービスと近しい商材の広告運用などを経験していると、なお有利だと言えるでしょう。
マーケティングを行う上での基礎知識は、どんな商品やサービスでも同じだと筆者は考えていますが、同種類の商材を扱った経験があると、即戦力として認識されやすいです。
筆者の在籍していた広告代理店でも、2人ほど事業会社に転職された方がいました。どちらも女性の方で、在籍時に美容・健康商品の広告運用に携わった後、美容・健康商品を取り扱う事業会社への転職をしています。
このように、実際の商品やサービスに携わった経験があると、転職時により有利に働くでしょう。
独立・起業する
4つ目は「独立・起業する」というキャリアパスです。特にマーケティング職・クリエイティブ職で多く見られます。
マーケティング職やクリエイティブ職は、様々な企業で求められる職種でありながら、企業側の知見がなく外注されることが多いため、独立・起業しても、仕事を獲得しやすいと言っても過言ではありません。
さらに広告代理店に勤めていると、取引先など外部との関わりを深める機会も多いため、独立・起業を行っても、繋がりを利用し仕事を獲得できる機会も豊富だと言えます。
実際に筆者の先輩は、LPの作成を会社で行いながら、副業でLP作成のコンサルティングを行っていました。その後、コンサルティングが爆発的に売り上げを伸ばし、いまや独立し株式会社を設立しています。
また広告運用者でも、1つの広告媒体のスペシャリストになり、個人的にアフィリエイト(成果報酬型広告。広告経由で発生した売り上げの一部を報酬として受け取れる広告)を行い、ある程度の額を稼いでいる上司もいます。
PCがあればすぐに出来る仕事だからこそ、他の職業よりも独立・起業のキャリアパスを考えやすいと言えるでしょう。
ただ、このキャリアパスを目指す場合も、まずは勤め先で実績を作ることが大切です。ある程度の実績を保持していれば、仕事が獲得しやすいとともに、取引のあったクライアントなどから依頼を受けられる可能性もあります。
広告代理店で働く女性の労働環境
では次に「広告代理店で働く女性の労働環境」に関して解説します。ただ労働環境は、会社の規模や方針などによって全くと言って良いほど異なるため、参考までに確認して頂けたら幸いです。
残業は多いのか?
まず残業に関しては、職種によって変わる場合が多いです。マーケティング職や営業職はほとんどの企業で残業が多く、クリエイティブ職やバックオフィス職は、繁忙期を除き残業は少ないでしょう。
マーケティング職や営業職の仕事は、基本的にクライアントが手綱を持っていることがほとんどなので、急な依頼やスケジュール変更などが多いです。そのため、スケジュールが過密になりやすく、残業も多くなりがちです。
一方でクリエイティブ職は、社内でも納期を握れる場合が多く、クライアントなどの社外担当者と触れ合う機会も少ないため、必要以上に過密スケジュールを避けられるという特徴があります。
またバックオフィス職の場合は、納期などを持つ業務が少ないとともに、社外と関わりを持つ業務(例:人事)は、バックオフィス側でスケジュールを管理できるため、残業は少ないでしょう。
土日出勤はあるのか?
土日出勤に関しては、正直、企業によって変わるのでなんとも言えませんが、筆者の経験上、ベンチャー企業在籍時はありましたが、中小企業に転職してから土日出勤をしたことはありません。
そのため、中小企業以上の規模であれば、土日出勤を強いられる場合は少ないでしょう。
ただ出勤はなくとも、土日でもPCを開き仕事の対応をすることはほぼ毎週ありました。丸一日することはありませんでしたが、大体2時間~長くて5時間ほど対応していた記憶があります。
土日の稼働に関しても、マーケティング職や営業職の人が多いでしょう。クライアントからの依頼に対応したり、広告の出稿状況確認のため稼働するイメージです。
プライベートは充実しているか?
他のオフィスワークと比べると、プライベートの充実度は少々低いと筆者は考えています。理由としては、残業が多かったり土日に稼働することも多々あり、どうしてもプライベートの時間が削られてしまうからです。
ただ筆者が経験した広告代理店の場合は、有給休暇をしっかりと取得できる環境だったので、旅行などを楽しんだ経験もあります。
もしものためにPCも所持していましたが、有休中の稼働を会社全体で禁止していたため、ほとんどPCも触らずリフレッシュしました。このように企業によって様々なルールが設けられている場合も多いので、プライベートの充実度も企業によって異なるでしょう。
服装の規定は厳しいのか?
服装の規定に関しては、ベンチャー・中小企業レベルであれば、比較的自由度が高いでしょう。ただ大手企業となると、歴史のある取引先などが来客することもあるため、厳しい場合もあります。
筆者が経験したベンチャーと中小企業では、来客が無ければジーンズでもOKでしたし、髪色なども、いわゆる金髪と言われる色で無ければOKでした(カラーレベル15まで)。
服装規定は企業によって細かく分かれますが、ベンチャー・中小企業レベルであれば、自由度が高いと考えて問題ないでしょう。
女性が広告代理店に就職・転職する方法
最後に「女性が広告代理店に就職・転職する方法」を紹介します。未経験で転職をする場合は「転職サイトと転職エージェントの併用」がおすすめです。
また、中途採用かつ未経験の場合、いきなり大手企業に入るには難易度が高いです。まずはベンチャーや中小企業に入社して、実績を積んでからキャリアアップを目指しましょう。
具体的な方法としては、転職サイトで広告代理店の様々な求人を確認しながら、転職エージェントでより具体的な希望を出しつつ、求人を探してもらいます。
もし転職サイトの方で気になる企業があれば、エージェントに求人が出ていないか・斡旋してもらえないか確認しましょう。
おすすめの転職エージェントは以下です。
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両方を活用することで、様々な求人を確認できるとともに、転職のプロにアドバイスなどを貰いながら転職活動を進められるので、より希望に近い企業へ転職できるでしょう。
内容のまとめ
本記事では「広告代理店で働く女性の年収・キャリアパス」を解説しました。広告代理店は、性別や学歴などに関係なく、実績次第で高収入を狙える職業です。
そのため冒頭でも触れたように「高収入・独立や起業を目指している」というような女性には、特に向いてると言えるでしょう。
一方で筆者の経験上「プライベートを重視したい・出産や子育てと両立したい」と考えている場合は、中小企業以上でないと厳しいと言えます。
ただ、広告代理店を経験することで、汎用的なスキルを習得でき、キャリアアップにも繋がりやすいと筆者は考えています。女性の方で、現在広告代理店への転職や就職を考えている場合、この記事が少しでも参考になれば幸いです。