Webディレクターについてネットで調べてみると、「Webディレクターの仕事は今後なくなるのではないか」という話題を目にします。
Webディレクターは、Webサイト制作のプロジェクトを管理する重要な仕事です。
重要な仕事にもかかわらず、なぜなくなってしまうと言われているのでしょうか?そして、本当になくなってしまうのでしょうか?
本記事では、実務経験が3年ある現役Webディレクターの筆者が、現場で感じていることを踏まえて、Webディレクターの将来性を解説します。
後半では、Webディレクターとして必要とされるために身につけたい知識も解説するので、これからWebディレクターを目指す人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
【結論】Webディレクターの仕事はなくならない
3年間実務を経験した筆者の結論は、「Webディレクターの仕事はなくならない」です。
Webディレクターの仕事は、Webサイト制作の進行を管理し、プロジェクトを成功に導くことがメインとなります。
サイト制作の目的をクライアントからヒアリングしたり、要望をまとめてデザイナーやエンジニアに伝えたりと、なくてはならない存在です。
そのため、Webサイトを作りたいと考えるクライアントがいる限り、Webディレクターの仕事はなくなりません。
Webディレクターの仕事がなくなると言われる理由
それでは、なぜWebディレクターの仕事はなくなると言われているのでしょうか?
実際に筆者が行っている業務を振り返ると、その要因が見えてきました。
ここでは、Webディレクターの仕事がなくなると言われてしまう理由を紹介します。
資格がなくてもできる仕事のため
Webディレクターの仕事は、資格がなくても始めることができます。
勉強のために資格を取ることはありますが、必須ではありません。最低限必要な知識とスキルも自分のペースで習得可能です。
そのため、極端に言えば、全くの未経験でもWebディレクターを始めようと思えば、すぐに始められます。しかし、知識が乏しいままWebディレクターの仕事をすると、プロジェクトを円滑に進められません。
こういった「できないWebディレクター」が増えてしまうと、ディレクターはいらないのではないか、と考える人もいます。
ルーチン業務もあるため
Webサイト制作は、クライアントごとに制作内容や進行方法が違います。
しかし、中にはルーチン化している業務があったり、トラブル対応などはある程度パターン化していることもあります。
そのため、複雑ではないプロジェクトは、Webディレクターがいなくても進行可能です。
また、進行管理やヒアリングも、AIの発達やWebツールの普及により、ある程度ならば誰でも簡単に対応できるようになりました。
こういった背景もあり、Webディレクターのいらないプロジェクトも増えています。
Webサイトの制作作業はしないため
プロジェクトの中で、実際にWebサイトを制作するのはデザイナーやエンジニアといった、現場の制作スタッフです。
Webディレクターがサイト制作の実作業に携わることはほぼありません。
そのため、指示や依頼はクライアントから直接聞いたほうが早い、と感じる制作スタッフもいます。
また、近年は簡単にサイトが作成できるノーコードツールも増えており、クライアント自身でサイト制作が可能です。
こういった理由から、デザイン知識や開発技術がないWebディレクターは必要ないと言われることもあります。
デザイナーやエンジニアが兼任するケースがあるため
フリーランスで活動するデザイナーやエンジニアは、Webディレクターの仕事を兼任するケースもあります。
また、フリーランスに限らず、企業によっては人員コスト削減のために制作スタッフがWebディレクターの仕事を兼任することも少なくありません。
兼任できるのであれば、専任でWebディレクターを置く必要がなくなってしまいます。
こういった理由からも、Webディレクターの将来性が不安視されているようです。
Webディレクターがいなくなるとどうなる?
仮にWebディレクターがいなくなった場合、プロジェクトはどうなるのでしょうか?
筆者の予想をいくつか紹介したいと思います。
兼任する作業が増えて仕事時間が長くなる
これまでWebディレクターが行っていた作業は、スタッフの誰かが兼任しなくてはなりません。単純に作業量が増えてしまうため、その分仕事をする時間が長くなってしまいます。
Webディレクターの仕事は、単純作業ではありません。クライアントにあわせた時間調整が必要で、1日中作業だけに没頭することは難しいでしょう。
誰が行うかは状況次第ですが、仮にデザイナーがWebディレクターを兼任する場合、自分が行うべきデザインの作業が進まない可能性も考えられます。
窓口が分散してトラブルが発生する
Webディレクターがいないと、クライアントの要望は制作スタッフが直接受けることになります。
しかし、制作工程を知らないクライアントの場合、誰にどのような要望を伝えたらいいかわからないかもしれません。制作の終盤になって、追加の要望がでてくる可能性も考えられます。
Webディレクターは、そういったクライアントの要望の窓口になり、精査することも仕事です。Webディレクターがいないと、クライアントの要望が分散してしまい、言った、言わないのトラブルになりかねません。
制作のクオリティが下がる
ここまでに紹介した2つによって、最終的には制作のクオリティが下がってしまうと予想できます。
制作スタッフがWebディレクターの作業を兼任すると、制作物に集中する時間が減ってしまうでしょう。クライアントの要望が分散してしまうと、やり直しが発生して、制作に時間がかかるかもしれません。
結果として、サイトの質や制作スピードといった、プロジェクト全体のクオリティ低下が予想されます。
Webディレクターは将来性のある仕事と言い切れる理由
サイト制作におけるWebディレクターの必要性を紹介しました。
他にもWebディレクターが必要とされる理由が2つあり、Webディレクターは将来性のある仕事だと考えています。
理由①:Webサイト制作の需要が伸びるから
近年Web制作の需要は伸び続けており、市場規模は広がる一方です。
ECの市場規模は、以下の経済産業省が公開しているグラフの通り2013年から2021年にかけて右肩上がりに成長を続けています。
また、経済産業省の「情報通信業基本調査」によると、過去3年間の情報サービス業の売上高は以下の通りです。
- 2018年度:18兆5,334億円(前年度比 1.8%増)
- 2019年度:18兆9,984億円(前年度比 2.5%増)
- 2020年度:18兆7,928億円(前年度比 1.1%減)
2020年度は新型コロナウイルスの影響で経済全体が停滞したものの、情報サービス業の市場規模は右肩上がりで成長しています。
こういった理由から、Webサイト制作の依頼はますます増えるのではないでしょうか。依頼の数が多ければ多いほど、プロジェクトをスムーズに進行して数をこなす必要があります。
そのためには、制作スタッフは制作に集中し、Webディレクターがプロジェクトを管理する形がベストです。
Webサイト制作の需要とあわせて、Webディレクターの需要も伸びると考えています。
理由②:AIでは対応できない役割を担っているから
近年はAIが発達しており、Webディレクターの仕事もAIが代替するのではないかと言われています。
しかし、Webディレクターの仕事にはコミュニケーション能力が重要です。クライアントの立場になって課題を解決することは、AIにはできません。
制作スタッフとコミュニケーションを取り、得意不得意を考慮した仕事振りができるのは、Webディレクターが人間だからです。
AIでは対応できない仕事は、引き続きWebディレクターが担当する業務だと考えています。
未経験から必要とされるWebディレクターになるには?
Webディレクターの仕事がなくならないとはいえ、必要とされる人材になるためにはそれ相応の能力を身につけておく必要があります。
これからWebディレクターを目指す方向けに、筆者が現場で感じている、デキるWebディレクターになるために必要な知識やスキルをご紹介します。
Webに関する知識を広く知る
クライアントの要望に応えられるよう、Webに関する知識は広く身につけておきましょう。
例えば、以下のようなサイト制作の基礎的な知識はマストです。
- HTML
- CSS
- ドメイン
- サーバー
また、下記のような最新のWeb情報なども把握することで、提案の幅を広げられます。
- Webサイト制作のノーコードツール
- Webデザインのトレンド情報
- 新しいWebフォントやフリーフォント
専門知識があれば、制作スタッフにも的確な指示が出せるため、プロジェクトもスムーズに進行できるようになります。
クライアントから要望を的確にヒアリングする力をつける
サイト制作では、クライアントの希望をすべて叶えられるわけではありません。技術的に不可能なものもあれば、納期や予算の問題で難しいこともあります。
そんな制約の中でクライアントの目的を達成するためには、サイトで何を実現したいのかヒアリングする能力が求められます。ヒアリング能力は、Webサイト制作に限らず、日常のあらゆる場面で身につけることができます。
友人や同僚、上司と話しているときなど、相手の話をしっかり聞くように意識してみてください。話の中で気になる点や掘り下げたいことが見つかれば、質問してみましょう。
この質問をスムーズにできるようになれば、クライアントとの打ち合わせでも、要点を引き出す質問ができるようになります。
クライアントの課題を解決する提案力を身につける
クライアントの要望を聞いたあとは、それに対する提案も必要です。
ゴールまでの道筋がイメージできる要望なら問題ありませんが、具体的ではなかったり、そもそも技術的に実現できない要望の場合、解決策や代案を提案しなければなりません。
どうすれば解決できるか考え、提案できる力も身につけるとよいでしょう。提案の幅を広げるためには、先ほど挙げたようなWebの知識が必要です。
Webに関する知識を広く身につけることが、提案力の向上に直結します。
デザイナーやエンジニアの仕事内容を理解する
サイトを実際に作成するのは、デザイナーやエンジニアなどの制作スタッフです。制作スタッフがどのような作業をしているか理解しておくことで、指示がしやすくなります。
最低限、以下のようなことは知っておきましょう。
- サイト制作の工程
- デザイナーやエンジニアが使っているツール
- サイトを制作するのに必要なスキル
仮に、Webサイト制作にどの程度時間がかかるか分からない場合、立てたスケジュールが短すぎて、納期に間に合わないといった事態が起こりえます。
プロジェクトをスムーズに進める上でも、デザイナーやエンジニアに寄り添うことは重要です。
Webマーケティングの知識を身につける
サイト制作の目的は、Webからの集客や認知度アップなどが挙げられます。こういったクライアントの目的を達成するために、Webマーケティングの知識は欠かせません。
サイトを作るだけのWebディレクターではなく、サイトで集客できるWebディレクターであれば、市場価値はさらに高まります。
SEOやアクセス解析といった、Webマーケティングの知識を身につけておくとよいでしょう。
Webマーケティングの勉強方法は以下の記事でまとめているので、ご覧ください。
Webマーケティングの独学勉強法を実践者が解説【転職・稼ぐ方法も分かる】嘘をつかず誠実な態度で仕事する
Webディレクターに限らず、仕事をする上で最も重要なことは誠実であることです。
特にサイト制作は、専門性が高いからこそ、クライアントはWebディレクターの発言を信じる他ありません。
サイト制作の現場でよくあるのは、Webディレクターが決める納期についてのトラブルです。サイトに組み込むシステムは、複雑であればあるほどイレギュラーが起こりやすくなります。
Webディレクターは、そのイレギュラーも見越した納期を設定しますが、その納期が必ずしもクライアントの希望納期となるわけではありません。
ところが、クライアントの要望通りの納期でできると伝えてしまい、納品を優先した結果、バグだらけのサイトができてしまう、ということもあります。
筆者が勤めていた企業のWebディレクターも、システムの複雑さを知りながら納期を優先させてしまい、信用を失ってしまった事例がありました。
筆者は現在、どのようなプロジェクトでも嘘をつかず、真摯に対応するよう心掛けています。そのおかげか、たとえ納期が少し遅れたとしても怒られたりはしません。
むしろ、感謝されることが多いです。
Webのプロとして最善が尽くせるよう、仕事に誠実に取り組むようにしましょう。
内容のまとめ:デキるWebディレクターになれば将来性がある
作業のルーチン化やAIの発達などにより、Webディレクターの仕事はなくなると言われています。
しかし、増え続けるWebサイト制作の需要を考えると、Webディレクターの仕事がなくなることはないでしょう。
デキるWebディレクターになれば、必ず必要とされる仕事です。
これからWebディレクターの仕事を始めようと考えている人は、今回紹介したWebディレクターに必要な知識とスキルを身につけてみてください。