Webマーケティングに携わるとよく耳にする「運用型広告」。部分的には理解できていても、マーケティング全体における立ち位置がいまいち見えてこないという人もいるのではないでしょうか。
本記事では、運用型広告とは何か、運用型広告と他の広告の違い、運用型広告の種類、など全容が理解できるようにまとめました。
こんな方におすすめの内容です
・運用型広告が何のことか分からない
・運用型広告にはどんな種類の広告があるのか知りたい
・運用型広告をどうやって始めればいいのか分からない
目次
運用型広告とは何か?
運用型広告とは、リアルタイムに予算調整やターゲット変更、クリエイティブ改善を行いながら運用し続けていく広告のことです。
インターネットの登場によって、広告の表示回数やクリック数、広告経由の申込数など様々な数値が計測できるようになり、運用型広告が発展してきました。
企業がインターネット(Web)上でプロモーション活動を検討する際、多くの場合で運用型広告が最初に検討に挙がるでしょう。
運用型広告を使えば、膨大な量の検索数を誇るGoogleの検索エンジンや、世の中に無数に存在するWebサイト上に好きなタイミングで広告を出すことができます。
また、運用型広告では、広告が表示されたりクリックされるごとに広告費が発生する課金形式が一般的です。
運用型広告に含まれない広告の種類
運用「型」広告と言うくらいなので、他の「型」の広告も存在します。ここで言う「型」とは広告の取引手法のことです。運用型広告以外の2つの広告の種類を説明します。
予約型広告
まず1つ目は予約型広告です。予約型広告は、広告の掲載期間や掲載場所、金額などが予め決まった広告枠を売買する取引手法で、代表例がテレビCMです。
テレビCMは放映するCMの秒数、1日の放映回数、放映時間帯、放映地域、放映期間などを予め取り決めて、条件に合った金額で広告主が広告代理店から購入します。
CMの効果が良かろうが悪かろうが、購入した分の広告が全て放映されるため途中でできることはありません。
また、テレビCMのような予約型広告には広告枠に限りがあります。1日は24時間しかなく放映される番組の数も限られているため、広告を出したくても枠が全て埋まっているという事態も起こり得ます。
予約型広告の一例
- テレビCM
- 新聞広告
- 交通広告(タクシー広告など)
- タイアップ広告(記事広告)
- 純広告
成果報酬型広告
2つ目は成果報酬型広告で、一般的にアフィリエイト広告と呼ばれるものと同義です。その名の通り、成果(商品の購入やお問い合わせなど)が発生してはじめて広告費が発生する取引手法です。
成果報酬型広告を利用したい広告主と成果報酬型広告枠を提供したい媒体(アフィリエイター)を仲介する、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)と呼ばれるサービスを利用して広告主は広告を配信します。
広告主としては、リスクを抑えてプロモーションができる点が最も大きなメリットです。
成果報酬型広告(アフィリエイト広告)についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
アフィリエイト広告とは何か?を初心者でも分かりやすく解説【図解あり】3つの種類の特徴をまとめると下記です。
運用型広告 | 予約型広告 | 成果報酬型広告 | |
---|---|---|---|
課金方式 | 表示課金・クリック課金 | 事前購入 | 成果発生で課金 |
広告予算 | 1円から配信可能 | まとまった予算が必要 | 成果1件あたりの報酬額から予算が必要 |
インターネット広告のほとんどが運用型広告
インターネット広告の種類(取引手法)には、運用型広告、予約型広告、成果報酬型広告の3つがあると説明しました。
冒頭で、インターネットを使った広告を検討する際はまず最初に運用型広告を検討するようになっていると言いましたが、実際のデータを示すとインターネット広告費のうち約83%が運用型広告の比率になっています。
下記の図は2020年のインターネット広告媒体費における運用型広告、予約型広告、成果報酬型広告それぞれの比率を表しています。
運用型広告の次に、予約型広告が11.5%、成果報酬型広告が5.6%と続きます。
また、2019年にはインターネット広告費が初めてテレビの広告費を抜いたことで話題になったことからも、運用型広告の影響度の大きさが窺えると思います。
運用型広告の特徴
既出のものもありますが、改めて運用型広告の特徴を3つ説明します。
詳細にターゲティングできる
まず1つ目は詳細にターゲティングができることです。マーケティングにおけるターゲティングとは、顧客を細分化して絞り込むことです。
例えば、運用型広告では下記のような項目で広告の配信先を絞り込むことができます。
ターゲティングで設定できる項目の一例
- 年齢
- 性別
- 地域
- 趣味趣向
- 検索エンジンの検索キーワード
- 自社のWebサイトに訪問したことがある人
- 自社の商品を購入した人と近い属性の人
ターゲティングをした方が広告効果は良くなります。女性用化粧品であれば女性だけにターゲティングした方が効率が良いのは明らかです。
テレビCMや新聞広告のような従来のマス媒体ではターゲティングができません。良くも悪くもテレビを見ている全ての人、新聞を見ている全ての人に広告が出てしまうので、獲得効率の面だけで言うと運用型広告には勝てません。
広告を無制限に作成できる
2つ目は広告を(ほぼ)無制限に作成できる点です。「ほぼ」と記載したのは一応上限は決まっているからです。例えば、運用型広告の一種であるGoogle広告では、一つの広告アカウントに400万個まで広告を作成することができます。
実際は400万個も広告をつくることはないと言っていいでしょう。よって、実質無制限に広告をつくることができます。
リアルタイムに改善できる
3つ目の特徴は既に何回も述べてきましたが、リアルタイムに広告の改善が出来る点です。リアルタイムに改善を進められるため、多くの事業会社が広告運用担当者を採用・育成し、専任を置くようになりました。
広告運用で修正・改善を行う項目の一例
- 広告クリエイティブ(広告文や広告バナー、LPなど)
- ターゲティング
- 予算配分
- 広告の配信場所
- 広告の配信媒体の選定
運用型広告の種類
では次に、運用型広告の種類について見ていきましょう。明確な分け方は決まっていないものの、今回は5種類に大別しました。
リスティング広告(検索連動型広告)
リスティング広告は、検索エンジン(Google、Yahoo!など)の検索結果画面の上部に表示することができる広告です。検索キーワードによって広告の出し分けができることから、「検索連動型広告」とも言われます。
調べ物をするような明確な課題感を持ったユーザーに広告を出すことができるのが特徴です。
広告媒体
- Yahoo!
- Bing
SNS広告
SNS広告は、主要なSNSのタイムライン等に表示することができる広告です。
アカウント登録の際にユーザーから取得した個人情報や、ユーザーの行動履歴から趣味趣向データを用いて広告主は緻密なターゲティングができるのが特徴です。
また、SNSごとで特性やユーザーの利用態度も異なるため、自社サービスと相性が良いSNSを選定することも重要なポイントです。
広告媒体
- LINE
SNS広告については、下記の記事もご覧ください。
今さら聞けないSNSマーケティングとは何か?SNSごとの特徴と手法を解説【図解で分かる】 【完全版】ゼロからFacebook広告の配信を開始するまでの全工程ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリ上の広告枠にバナーを表示させる広告です。Webサイトの下部や左右に広告バナーが表示されているのを見かけることも多いでしょう。
また、ディスプレイ広告ではほとんどの場合、アドネットワークの仕組みが採用されています。
アドネットワークとは、インターネット上にある様々なWebサイトを集めてネットワークを作り、集めたWebサイトにまとめて広告を配信できる仕組みです。
アドネットワークがなければ、広告主は広告を掲載したいWebサイトと1つ1つ連携する必要があります。これは非常に面倒なので、アドネットワークと呼ばれる広告技術が誕生しました。
アドネットワークを図で説明すると下記です。
代表的なディスプレイ広告
- GDN(グーグルディスプレイネットワーク)
- YDN(ヤフーディスプレイネットワーク)
動画広告
動画広告は、その名の通り動画を配信する広告です。
代表的な動画メディアはなんと言ってもYouTubeです。YouTubeで動画を見ている途中に広告が流れてくる体験をしたことがある人は多いでしょう。
YouTubeは世界最大規模の動画メディアであり、YouTube内でクリエイターとして活動するYouTuberは絶大な影響力を持っています。
近年、動画をメインとしたメディアが増えており、広告主も動画広告にかける予算を増やしているため注目を集めています。
代表的な媒体
- YouTube
- TikTok
Amazon広告
Amazon広告は、Amazon内に表示することができる広告です。世界最大級のECサイトでAmazon広告へは、ネットショップを営んでいる多くの企業が商品を掲載していますが、世界最大級であるが故に、自社の商品をユーザーに見つけてもらうのが非常に困難です。
そこで、Amazon広告を利用します。Amazon広告を使えば、商品の検索結果画面の上部に自社の商品を掲載することができたり、商品詳細ページで自社の商品を訴求することができます。
運用型広告を開始するまでのステップ
最後に、運用型広告を開始するまでのステップを3つに分けて説明します。
1. 配信する媒体を決める
まず最初に配信する広告媒体を決めます。色々な運用型広告の種類を説明してきましたが、自社のビジネスの目標に合った媒体を選定することが最も重要です。
とはいえ、どの媒体が自社に合っているのか分からないという方もいるでしょう。そんな方のために、マーケティングの目的別に最適な配信媒体を選択する考え方をお伝えします。
下記の図はマーケティングファネルと呼ばれるマーケティングの考え方の一つで、ユーザーが商品を認知してから購入に至るまでの購買行動を示したものです。当たり前のことですが、認知をしているユーザーが最も多く、購買に至るユーザーが最も少なくなります。
比較検討ユーザーが自社にとって最も顧客に近く、マーケティング用語で顕在層と言います。興味や認知ユーザーは将来的に顧客になり得る層で、潜在層と言います。顕在層を集客するか、潜在層を集客するかで、最適な広告媒体が異なります。
具体的には、マーケティングファネルの各階層と、それにマッチする広告媒体は下記の図のようになります。
もちろん、この図が全てではないため、実際は運用をしながら色々トライした方がいいです。最初はあまり考え過ぎずに、いくつかの広告媒体で少額で広告を出しながら改善していくことをおすすめします。
その方が、運用型広告のメリットを最大限に活かせます。
2. 広告アカウントを開設する
配信する広告媒体を選定したら、広告アカウントを開設します。運用型広告ができる媒体では、無料で広告の配信システムを提供してくれています。広告の配信システムのことを「広告アカウント」と言います。
例えば、Twitter広告を始めたい場合はこちらのページからTwitterの広告アカウントを作ることができます。
「媒体名 広告」と検索すれば、ほとんどの場合、広告アカウントの作成ページが出てきます。広告アカウントを作成する際は、決済情報を登録する必要があるため事前に準備しておきましょう。
3. 広告の配信設定をする
最後に、広告アカウントを使って広告の配信設定を行います。
最初は色んな設定項目があって戸惑うかもしれませんが、全てを覚える必要はありません。運用をしていくと次第に覚えてきます。
いかがだったでしょうか。運用型広告のことが記事を読む前よりも理解できていれば嬉しいです。
内容のまとめ
- 運用型広告とは、リアルタイムに予算調整やターゲット変更、クリエイティブ改善を行いながら運用し続けていく広告のこと
- 運用型広告以外に、予約型広告、成果報酬型広告があり、予約型広告は広告枠を事前に購入する取引手法で、成果報酬型広告は成果が発生するごとに課金が発生する取引手法
- インターネット広告費のうち約83%を運用型広告が占めている
- 運用型広告の特徴は、詳細なターゲティング、無制限に作れる広告、リアルタイムな改善の3つ
- 運用型広告と一括りにしても、SNS広告からリスティング広告、ディスプレイネットワーク広告まで種類は様々で、自社のサービスに合った媒体を選ぶことが重要