【要約】苦しかったときの話をしようか【森岡毅】

本書は、経営不振に陥っていたUSJをV字回復させ、現在はマーケティング集団「刀」を経営する森岡毅さんによって書かれた著書です。

マーケターで森岡さんのことを知らない人はほとんどいないでしょう。

森岡さんはこれまで、テーマを変えて様々なビジネス書を出されています。

その中で、唯一本書のみがキャリアに焦点を当てています。なぜなら、本書が社会人になる娘に向けて書かれたものだからです。

様々な苦難や成功を経験した森岡さんだからこそ語ることができる、働くことの本質、資本主義の本質、キャリアを成功させる方法が余すことなく記載されています。

就活生だけでなく、キャリアや仕事に悩んでいる全てのビジネスマンにイナズマが走るほどの刺激を与えてくれる一冊です。

苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」

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自分の宝物(=特徴)が強みになるキャリアを選択する

キャリア戦略とは、その人の目的達成のために、その人が持っている”特徴”を認識して、その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく、その勝ち筋を考えるということだ

苦しかったときの話をしようか

森岡さんはキャリアをこのように捉えています。

多くの就活生が「やりたいことが分からない」という悩みを抱えているでしょう。この漠然とした悩みを解決するためには、まず自分自身のことをよく知る必要があります。

その人が持っている”特徴”は、他人との比較の中で見つかるのではなく、自分の中からしか見つかりません。自分自身に目を向ける必要があるのです。

過去20年の人生の中で多かれ少なかれ、必ず自分が得意だと感じること、やっていて苦にならないことがあるはずです。

例えば、誰とでも会ったその日に仲良くなれる人は、それがその人の特徴になります。何事に対しても手を動かす前に、効率良く結果を出す方法を考えようとするのであれば、それがその人の特徴になるのです。

特徴を認識することができれば、あとはそれが強みとして活きる仕事、スキル、キャリアを選択していけばOKだということです。

成功は必ず人の強みによって生み出されるのであって、決して弱みからは生まれない。

苦しかったときの話をしようか

この一文から分かる通り、とにかく強みにフォーカスすることで、キャリアの成功確度を高めていくことができます

社会は資本家に都合の良い構造になっている

資本主義社会においては、大きく分けると下記の2種類の人間しかいません。

  • 自分の24時間を使って稼ぐ人(サラリーマン)
  • 他人の24時間を使って稼ぐ人(資本家)

つまり何が言いたいかというと、資本主義社会とはサラリーマンを働かせて、資本家が儲ける構造を持っているということです。サラリーマン側で人生を過ごした人と資本家側で人生を過ごした人では、生涯収入が驚くほど異なるのです。

にも関わらず、ほとんどの人が何の疑いもなく会社に就職して、サラリーマン人生を全うしていきます。これは、日本の教育が大量のサラリーマンを生み出す仕組みになっていて、サラリーマンの外にある資本家の世界があることに目がいかないからです。

森岡さんも自身の経験から下記のように述べられています。

私の古巣のP&Gにも頭の良い人は山ほどいた。しかし全員が疑いもなくサラリーマンを喜んでやっていたのだ。これはなぜか?

これこそがパースペクティブの差であり、その限界だ。人間は、自分が知っている世界の外を認識することができない。親がまじめなサラリーマンの子供は、その人生において、まじめなサラリーマンで一生過ごすことがパースペクティブになっている。

苦しかったときの話をしようか

とは言え、一般人がいきなり資本家になることはできません。資本家になるための方法として下記のような手段があります。

  • 上場している企業の株式を購入する
  • 会社を起業して、その会社の企業価値を上げてから上場もしくは第三者に売却する
  • 一度業績が悪化した会社の経営改善に参画して、株式で報酬を得る

別に本人が望まないのであれば、資本家になる必要はありません。ここで伝えたい重要なことは、パースペクティブ(本人が認識できる世界)を広く持つということです。あらゆる選択肢を知った上で自分の意志を持って最終的な意思決定を下すことが大事なのです。

My Brandを構築してキャリアを成功させる

My Brandとは文字通り、自らをブランドとして捉え、そのブランド価値を高めていくことです。

My Brandがもたらす3つの効果
  • プレゼンや面接で緊張しなくなる
  • スキル習得やキャリア選択の際の判断軸ができる
  • 自分の名前で仕事ができる人になれる確率を激増させる

ブランドの設計図を考える手順はシンプルで、どの市場において「WHO(誰に)」「WHAT(何を)」「HOW(どう届ける)」を言語化することです。

出典:著書「苦しかったときの話をしようか」

攻略する市場

ジョブマーケットにおいて、その人の職能の切り口で定義したり(マーケティング業界、弁護士業界)、その企業を含む業界での定義(自動車業界、IT業界)します。

例えば、IT業界でキャリアを積んでいきたいと考えるのであれば、攻略する市場は「IT業界」となります。

WHO(誰に)

WHOはブランドのターゲットを規定します。ターゲットにはST(戦略ターゲット)とCT(コアターゲット)の2つがあります。

戦略ターゲットは、経営資源を投下する広いくくりのことで、コアターゲットは戦略ターゲットの中でより集中して資源を投下する狭いくくりのことです。

例えば、就活で考えると、戦略ターゲットは面接を受ける企業に属する人全てであり、コアターゲットはより担当面接官と決めることができます。

WHAT(何を)

WHATはブランドが持っている価値を規定します。価値のことをブランドの”便益”(ベネフィット)と言います。

就活で考えると、自分が学生時代に時間を使ったことの中から、自分ならではの経験や実績を便益として訴求することができます。例えば、部活動をしていて全国大会ベスト8チームのキャプテンであれば、「全国大会ベスト8」「全国大会出場チームのキャプテン」が強力な便益となります。

HOW(どう届ける)

HOWは便益を提供するための手段を規定します。具体的な実行プランである”戦術”です。

就活で考えると、WHATで決めた自分自身の価値を、WHOで決めたターゲットに届けるための具体的な表現ということになります。「全国大会出場チームのキャプテン」という価値を伝えたいのであれば、「困難な状況でも周囲の指揮を高めて一致団結させることが得意」と表現すれば、WHATが良く伝わるでしょう。

このように、キャリアのどの場面においてもMy Brandを常に意識しておくことで、自分自身の価値を高めることに繋がり、キャリアを成功へと導いてくれるのです。

一番苦しい仕事とは、自分の存在価値を疑うとき

人が仕事をしていて最も苦しいと感じる時はいつなのでしょうか?

森岡さんは下記のように言います。

人はどういうときに最も苦しいのか?それは、働いて働いて、死ぬほど忙しいときでは決してない。会社や上司や周囲の評価が厳しいときは、辛いのは間違いないけれども、それも最も苦しいときではない。人が最も苦しいのは、自己評価が極端に低くなっているとき。自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたときだ。

苦しかったときの話をしようか

森岡さん自身も自己評価が落ちて苦しかった経験があり、著書の中で3つ紹介しています。その中でもブランドマネージャーに昇進して初めて任命されたプロジェクトの話が印象深いので抜粋します。

そのプロジェクトは世界本社のCEO肝煎りで、「フィジーク」と呼ばれるブランドの日本導入プロジェクトでした。前任のブランドマネージャーが開発を進めていて戦略も全て決まっており、あとはテストマーケティングを実施するだけだったそうです。

しかし、どう見ても戦略が最悪でした。日本のヘアケア部門でこれが成功すると思っていた人は一人もいないほどです。

にも関わらず、テストマーケティングまで意思決定された理由は、世界本社CEOの肝煎りプロジェクトだったから。それ以上でも以下でもありません。つまり、誰もこのプロジェクトに対して「こんなの成功するはずがありません!」と言えなかったのです。

森岡さんは別のプロジェクトに変えてもらうべく上司に食い下がって「あなたは私を失敗させるためにブランドマネージャーに昇進させるつもりなのか?」と強く突っ込みました。

それに対する上司からの回答が下記です。

君の才能にも将来にも期待しているから昇進させるに決まっているだろ!P&Gでブランドマネージャーになりたいのであれば君はこれを受けるしかない!

Don’t worry! Launch quickly, learn quickly, and die quickly!(心配するな、早く出して、早く学んで、早く死ね!)

苦しかったときの話をしようか

要は、上司も含めて誰もこのプロジェクトが成功するとは思っていなかったということです。

誰も上手くいくと思っていないプロジェクトなのに、何百人もの人を巻き込んでテストマーケは開始されました。そして案の定、プロジェクトは大失敗したのです。

このことから、森岡さんはサラリーマンである以上は、「後ろ向きな仕事」を避けることはできないということを学んだそうです。そして、このような無力なサラリーマンを脱するために、消耗品のような「人材」ではなく、辞められると本当に困る「人財」になろうと決意したそうです。

そうすれば、会社と対等に交渉もでき、いつでも会社の枠を超えて自分の名前で仕事ができるビジネスマンになれるからです。

森岡流「自分の弱さ」と向き合う方法

森岡さんの「弱さとの向き合い方」はこれまでの内容と一貫しています。ズバリ、強みを補填できるなら向き合い、相反するなら捨てろです。

会社や上司から何かを要求されたり、期待されている時、それが以下3つのどのパターンに当てはまるかを考えるべきだと言います。

  1. 自分の強みの特徴と相反する
  2. 自分の強みの特徴をより強化する
  3. わからない

①の場合はギブアップです。受け入れてはいけません。なぜなら、会社や上司にとっては都合がいいかもしれませんが、あなたにとっては都合が悪いからです。「はい、努力します!」と明るく受け答えしながら、本心では強みを活かして解決する方法に集中すべきなのです。

もし、それで存在を認めてもらえないならば、認められる環境を探しにいけばOKです。

②の場合は真剣に改善に取り組むべきです。上司から言われたことをやってみることで、自分の特徴をよりよく理解することができるチャンスになります。それが強みになるのであれば、成長につながります。

③の場合も食べず嫌いをせずまずは素直にやってみるです。成果を上げるように積極的に取り組んでみることで、新しい特徴を見つけるきっかけになります。

下記のように、きっぱりと強みだけにフォーカスして弱みは諦めろと主張されています。

人が弱点を克服できるのも、すべきなのも、その人の強みとなる特徴の周辺環境だけだ。それ以外に費やす努力は、リターンをほとんど生まないと私は考えている。

だから、自分が強めたい能力をもっと強くするために弱点を克服していく、それ以外はキッパリと諦めるのだ。

苦しかったときの話をしようか

とはいえ、成し遂げたい仕事のために弱点がクリティカルに悪影響を及ぼしそうな場面に出くわすことがあります。そんな時は、他者の力を借りましょう。自分の弱みに向き合う時間は捨てるのです。他者の力を借りるためには、一緒に働く人の特徴をよく見なければいけません。

他人を見る目が養われると、結果的に組織として成果を出せるようにもなります。

いかがだったでしょうか。

本記事を読んで、中身が気になった方は是非一度書籍を手に取ってみてください。

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内容のまとめ

  • キャリアの成功確度を高めるためには、強みが活きるスキルや仕事を選んでいかなければいけない。そのためには自分自身の特徴を知る必要があり、それは他人との比較ではなく自分の中からしか見つからない
  • 資本主義社会は資本家に都合の良い構造になっており、資本家になることを望もうが望まなかろうが、資本家の世界があるというパースペクティブを持つことが重要
  • My Brandを構築することが自分の市場価値を高めることにつながる。My Brandの作り方は、まず攻略する市場を決めて、その後にWHO(誰に)、WHAT(何を)、HOW(どう届ける)を決める
  • 人が最も苦しいのは、死ぬほど忙しい時ではなく、自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたとき
  • 森岡流の弱みとの向き合い方はシンプルで、「強みを補填できるなら向き合い、できないなら捨てる」。強みとならない弱みは克服するのが難しく、費やす努力に対してリターンがほとんど見込めない

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